領民のブログ

領民とかいう人のブログです。あんまり頻繁に更新するつもりはありません。

物性テンソルの入門、Bilbao Crystallographic Server、そしてエロゲ

 ブログでは一年ぶりになりますね。領民です。今年もAP Advent Calendar 2018に参加したいと思います。確認している限り物理で記事を書いているのは私だけのようですね(みんなもっと書いて♡)。空気を読まずに意地でもプログラミングにはノータッチで行きます。ちなみに私は物理工学科卒なのですが、今は物理工学科ではない学科にいるので卒業生というだけでマジで無関係の他人です*1。怒られが生じたら記事は取り下げます。去年の記事も放置していて完成していないのですが、まあお許しください。だいがくいんせいはかこくなのだ!へけっ!
 今年のお話は

  1. 物性テンソルの入門
  2. Bilbao Crystallographic Serverの紹介および一部機能の入門
  3. 現役東大生が語る!エロゲの良さとおすすめエロゲ!!

の三点盛りです。1,2つ目は実質同じ内容みたいなもんです。さて、この部分を書き始めたのは12/02なのですが、果たして期日までに完成させられるのでしょうか。
目次

1 物性テンソル入門

 本節では、物性物理(あるいは化学や材料科学などの分野)において扱われる「テンソル」なるものについて簡単な説明を与えます。1.3節で少しだけ各論は取り扱いますが、基本的には種々のテンソルの性質を全部紹介するタイプの記事ではないことを予め宣言しておきます。
 また、当記事ではテンソルを取り扱うにあたって Einstein の縮約記法を用いています。相対論的な取り扱いはしないので、反変・共変の区別はせずにすべて下付きの添え字です。
 一応簡単な説明をします。同じ項のなかで繰り返されている添え字があれば、その添え字について\(1,2,3\)あるいは\(x,y,z\)の和を取るということです。たとえば、\(A_iB_i\)という項があった場合、
\[
A_iB_i=\sum_{i=x,y,z}A_iB_i=A_xB_x+A_yB_y+A_zB_z
\]
となります。これはベクトルの内積に相当します。
 次にわかりやすい例として、行列の積があります。今度は逆に和の記号を外して縮約記法にしてみましょう。3次正方行列*2\(A=(a_{ij})\)と\(B=(b_{ij})\)の積を\(C=AB\)のように書くことにすると、一般の成分を
\[
c_{ij}=\sum_{l=1,2,3}a_{il}b_{lj}
\]
と書くことができます。これは、\(l\)について和を取っているので、総和記号を外すことができて\(c_{ij}=a_{il}b_{lj}\)となります。
 たぶんこれだけでは何が便利なのかわからないと思いますが、まあ使っているうちにご利益がわかってくると思います(特に座標変換とかをするときに)。

1.1 (物性)テンソルとは

 物性におけるテンソルとは、物理量と物理量の間に線形(もしくは\(n\)乗について線形)な対応関係があるときの変換係数のことです。私が思うに一番有名な例は Hooke の法則(フックの法則)というやつで、弾性体を変位させると、変位\(x\)に比例した力\(F\)が働いて
\[
F=kx
\]
のように表現できます。これはどうも1成分しかないですが、実際の物質では\(x\)軸、\(y\)軸、\(z\)軸によってばね定数が違うということがありそうです*3。それを考えると、 Hooke の法則は次のように書けそうです。
\begin{align}
F_x=k_xx \\
F_y=k_yy \\
F_z=k_zz
\end{align}
これはつまり、
\begin{align}
\begin{pmatrix}
F_x \\
F_y \\
F_z
\end{pmatrix}
=
\begin{pmatrix}
k_x & 0 & 0 \\
0&k_y&0 \\
0&0&k_z
\end{pmatrix}
\begin{pmatrix}
x \\
y \\
z
\end{pmatrix}
\end{align}
あるいは\(
F_i=k_{ij}x_j
\)ということです(本記事では、\(x=x_1, y=x_2, z=x_3\)という略記を使います)。
 こうなると非対角成分も考えたくなりますが、実際そのような項が有限になるような状況はいくらでも存在します。したがって、
\begin{align}
\begin{pmatrix}
F_1 \\
F_2 \\
F_3
\end{pmatrix}
=
\begin{pmatrix}
k_{11} & k_{12} & k_{13} \\
k_{21}&k_{22}&k_{23} \\
k_{31}&k_{32}&k_{33}
\end{pmatrix}
\begin{pmatrix}
x_1 \\
x_2 \\
x_3
\end{pmatrix}
\end{align}
のようになります。これは結局、変位というベクトル*4と力というベクトルの間をばね定数というテンソルで結び付けた関係式ということになります。
 ばね定数の例ではテンソルが添え字を2つしか持たないので行列で書けるのですが、世の中にはもっともっと添字の多いテンソルがたくさんあります。有名な(?)例としては、Hall 効果を記述するテンソルも添字3つだったりします。後述するBilbao Crystallographic Serverのテンソルのデータベースには、なんと添字が8個もあるテンソルすら載っています。やっぱ世の中簡単に書ける表式だけでは済まないんですね。

1.2 テンソルの成分と対称性

 テンソルの座標変換に対する変換則は対称性によって規定されています。ここでいうテンソルとは、物性テンソルと物理量としてのテンソルをひっくるめて扱ったものと思ってください。テンソルを対称性で分類するとき、最も大きな枠組みはそのテンソルが極性であるか軸性であるかということです。典型的な状況についてのお気持ちを言ってしまうと、極性テンソルとは普通のテンソルのことで、軸性テンソルとは外積によって定義されるような物理量に絡むテンソルです。ちゃんと定義すると、右手系・左手系の変換によって符号が変わらないテンソルが極性テンソルで、符号が変わるテンソルが軸性テンソルです。
 極性と軸性のテンソルうしの掛け算では、次のような関係が成り立ちます。
\begin{align}
(極性)\times(極性)=(極性) \\
(極性)\times(軸性)=(軸性) \\
(軸性)\times(極性)=(軸性) \\
(軸性)\times(軸性)=(極性)
\end{align}
要するに軸性テンソルは\(-1\)な気分です。この関係式により物性テンソルが満たすべき対称性は、\(X\)という物理量を\(Y\)に変換する\(P\)というテンソルがあったとき、\(Y=PX\)の両辺の極性or軸性が正しくなるようなものでなくてはならないというものであるとわかります。
 以上の規則は座標変換の右手系・左手系の変換に伴うものでしたが、そもそも対象にしている系(物質)が対称性を持っている場合、その対称性に起因してテンソルの具体的な成分に何らかの制約が生じる場合があります。例として物性テンソルとして有名な誘電率テンソル\(\varepsilon_{ij}\)というものを考えてみます。誘電率テンソルは電場\(E_i\)と電束密度\(D_i\)を結びつける2階の極性テンソルで、
\begin{align}
D_i=\varepsilon_{ij}E_j
\end{align}
という関係式を作り出しています。系に\(C_{4v}\)や\(S_2\)や\(m\)などの対称性がある場合、その対称操作によって座標を変換しても式の形が不変でなくてはならないという制約があります。変換後の変数にプライムを付けることにすると、
\begin{align}
D_i'=\varepsilon_{ij}'E_j'
\end{align}
とならなくてはなりません。ここから、\(\varepsilon_{ij}\)の成分についての制約条件が求められます。全ての対称操作についての制約条件を全部きっちり連立して、0になる成分や等しくなる成分などをぜんぶきっちり計算することで最終的なテンソルの形がわかります。たとえば、\(4/mmm\)という点群における誘電率テンソルの表式は、
\begin{align}
\begin{pmatrix}
\varepsilon_{11} &0&0\\
0&\varepsilon_{11}&0\\
0&0&\varepsilon_{33}
\end{pmatrix}
\end{align}
のようになります。のちに紹介するBilbao Crystallographic Serverでは、点群を与えるだけでこのようなテンソルの表式を与えてくれます(毎回計算してるのか結果を蓄えてるのかは知らないけれど)。

1.3 物性テンソル各論

 この節を凝るとキリがないのでサクッと行きます。私は輸送に関係する物性をやっていなくてわからないので、staticなテンソルを中心に紹介します。

1.3.1 電磁気・光関係のテンソル

 電磁気学で出てくるテンソルで一番わかりやすいのが誘電率透磁率テンソルです。表式は
\begin{align}
D_i=\varepsilon_{ij}E_j \\
B_i=\mu_{ij}H_j
\end{align}
です。大変ややこしいのですが、実質同じ意味で使えるテンソルとして電気感受率・磁気感受率というテンソルがあって
\begin{align}
P_i(=D_i-\varepsilon_0E_i)=\chi_{ij}^{\mathrm{e}}E_j \\
M_i(=B_i-\mu_0H_i)=\chi_{ij}^{\mathrm{m}}H_j
\end{align}
のようになります。要するに誘電率透磁率から真空の成分を取り除いたテンソルです。関係式を示しておくと、
\begin{align}
\varepsilon_{ij}=\delta_{ij}\varepsilon_0+\chi_{ij}^{\mathrm{e}} \\
\mu_{ij}=\delta_{ij}\mu_0+\chi_{ij}^{\mathrm{m}}
\end{align}
となります。
 誘電率透磁率は2階の極性テンソルなので、まあ実質は行列です。そこで、逆行列に対応する逆テンソルのようなものがあって、
\begin{align}
E_i=\beta_{ij}^{\mathrm{e}}D_j \\
H_i=\beta_{ij}^{\mathrm{m}}B_j
\end{align}
のように逆誘電率・逆透磁率というものがあったりします。
 光学関係では、誘電率テンソルを様々に使い倒して様々な結果を得ようとします。たとえば非線形光学効果のなかでもn次高調波と言われるようなものの発生に効いてくるテンソルとして、n次の誘電率があります。式で表すと、
\begin{align}
D_i=\varepsilon_0E_i+\chi_{ij}^{\mathrm{e}}E_j+\chi_{ijk}^{2\mathrm{\omega}}E_jE_k+\chi_{ijkl}^{3\mathrm{\omega}}E_jE_kE_l+\dots
\end{align}
のような感じです。なんでこんな項が出てくるのか私は知らないです。こんな感じで、比例関係を示すテンソルが存在すると高次の項も存在していることがけっこうあります。
 あるいは、逆誘電率に電場依存性があることがあります。つまり、
\begin{align}
\beta_{ij}^{\mathrm{e}}=\beta_{ij}^{0}+z_{ijk}E_k+R_{ijkl}E_kE_l+\dots
\end{align}
のような感じです。だいぶマニアックになってきましたが、\(z_{ijk}\)が Pockels 効果を表現するテンソルで、\(R_{ijkl}\)が(電気光学) Kerr 効果を表すテンソルです。一体どういうときに使うのでしょうか。ちなみに逆誘電率が磁場に依存する場合の1次の項が Faraday 効果を表すテンソルで、2次の項が磁気 Kerr 効果を表すテンソルです。

1.3.2 応力・歪み関係のテンソル

工事中

2 Bilbao Crystallographic Server

 本節ではBilbao Crystallographic Serverの使い方を一部紹介します。私もよく知らないのですが、About usによると1997年にバスク大学の Materials Laboratory なるところによって作られたそうです。
 Bilbao Crystallographic Serverは、その名の通り結晶学的なデータベースがたくさん載っているサービスです。正直、機能が多すぎて私にも全く全容が掴めていません。とりあえず、本節では一部機能の使い方を紹介することで存在を皆さんにも知っていただこうと思います。

2.1 使い方の例1 Reflection conditions

 わかりやすい奴から行きましょう。単結晶にX線を当てると、 Bragg の条件を満たす方向に反射が生じます。Bragg 条件を満たす方向はたくさんありますが、その中には実際には位相が打ち消し合って反射が生じない方向があります(消滅則)。どういう反射が可能であるかは、その結晶の空間群およびその原子のサイト( Wyckoff 位置)によって決まっていて、たとえば International Tabel を見ると書いてあります(頑張れば自力で計算もできます)。そして、Bilbao Crystallographic Serverでも調べることができます。
 Bilbao Crystallographic Serverにアクセスすると、カラフルな長方形の中に白抜き文字のメニューがたくさん表示されるはずです。今回は、その中から一番上にある"Space-group symmetry"を選んで(クリックして)ください。すると小項目がたくさん現れるので、その中から"HKLCOND"を選んでください。すると、空間群を選ぶように指示されるので空間群を選んでください(リストから選択もしくは番号で指定)。すると、結晶の Wyckoff 位置ごとの反射条件がすべて表示されます。やったぜ。

2.2 使い方の例2 Tensors

 1.2節で出てきたような点群ごとのテンソルの表式は、もちろん自分で計算することもできるのですがはっきり言って死ぬほどめんどくさいです。点群ごとのテンソルの形をまとめた文献もたくさんありますが、必ずしもあらゆるテンソルが網羅されているとは限りません。そこでBilbao Crystallographic Serverです。
 Bilbao Crystallographic Serverにアクセスし、"Solid State Theory Applications"→"TENSOR"を選んでください。すると点群を選ぶように言われるので選びましょう。この画面にはチェックボックスがたくさんありますが、意味が分からない場合チェックボックスは一つもいじらないままで大丈夫です。
 次に、画面の下の方に"EQUILIBRIUM TENSORS", "OPTICAL TENSORS", "TRANSPORT TENSORS"という三つの項目があるので、そのうちいずれかを選択してください。たぶんどの項目を選んでもマニアックなテンソルが世界にはいっぱいあるということがわかると思いますが、それはともかく目的のテンソルを選んでください。最後に一番下にある"Get results"をクリックすると目的のテンソルの形を表示してくれます。
 ちなみに、Bilbao Crystallographic Serverには他にもテンソルを表示するサービスがあります。例えば磁気点群および磁気空間群からテンソルの成分を表示するモードがあって、"Magnetic Symmetry and Applications"→"MTENSOR"から選ぶことができます。このモードは普通の"TENSORS"とほぼ同じように使えますが、電気磁気テンソルや磁気カー効果のテンソルなども表示されます。他には"Raman and Hyper-Raman scattering"→"RAMAN AND HYPER-RAMAN TENSORS"からはラマンテンソルを表示することができます。

3 エロゲはいいぞ

 去年小説家になろうの作品について体系的に何か書こうとしたら体系がつかみきれず自爆したので、今年は気が赴くままにいくつかのトピックでざっくり話を区切りながら適当に書きたいことだけを書いていきたいと思います。真面目な記事にしか興味がない各位はここで読むのをやめてください。

3.1 エロゲとは

 エロゲとは、簡単に言ってしまうと性的描写を含むゲームのことです。たいていはPC用のビジュアルノベルゲームという体裁で売られていて、未成年が入手することは業界によって自主的に規制されているようです*5。パッケージが箱状でそこそこ大きいことが特徴で、値段も新品だと10000円近く(たまにそれ以上)するのが普通です。我ながらなんでこんなのを何個も買ってるんだという感じです。
 Twitterだとエロゲプレイヤーが山ほどいるので勘違いしがちですが、数多いオタク趣味の中でも相対的に大っぴらにしにくいタイプの趣味であり、おそらく人口も多ジャンルに比べてかなり少ないです*6。この趣味に入ってこようと思う人は、自分がそういう対外的に評判がよくないうえに人口が少ないジャンルに入ろうとしていることは自覚するべきかもしれません(別にたいした問題ではないけれど)。

3.2 推しメーカーについて

 エロゲの購入にあたっては奇妙な文化があります。というのも、新品で購入する際にはほぼ確実に事前予約されるのです。まあたいていのメーカーは事前に体験版を公開したりゲームの概要について公開したりするのでおおよその内容の予測は付くのですが、最終的にはメーカー、シナリオライター、絵師、声優、etc...などを信用して買うしかありません。その意味でこの業界でもやはり「推し」が大事になってくるわけです。
 推しをガチで紹介し始めるとキリがないので、本記事ではメーカーを一つだけ紹介しておこうと思います。みなさんこのアイコンのことを覚えているでしょうか。

f:id:ryomin13klp:20181213063852j:plain
このTwitterアイコンは、CLOCKUPというエロゲブランドの、euphiria(リンク先いきなりエロなので注意!)というゲームのキャラクターのものだったのです。今回はこのCLOCKUPというメーカーを紹介することにします。
 CLOCKUPはわりと多彩な作風のゲームを作っています。さっき紹介したeuphoriaMaggot baits夏ノ鎖に代表されるかなりシリアスな作品から、プリーズ・レ〇プ・ミービーチクビーチのようなほぼギャグのような作品まであります。そんな様々なジャンルを貫く一つの特徴があって、常にエロに対して全力だということです。世の中には「シナリオゲー」などと言われるような、エロよりもシナリオに全力を注ぐタイプのゲームもありますが(それはそれで良さがあります)、CLOCKUPに限ってはそのようなことはまずありません。どんな作品でもめちゃくちゃにエロを入れてくる、それが私がCLOCKUPの作品を愛する理由なのです。

3.3 抜きゲー(直球)

(工事中)

3.4 インディーズもある

(工事中)

3.5 エロゲソングもいいぞ

(工事中)

3.6 最後に一言

(工事中)

*1:今私がいるのは新領域創成科学研究科物質系専攻というところで、物理工学と応用化学とマテリアルが分家を出し合って生まれたような専攻みたいなものなのですが、決してフォーマルには応用物理系ではないんですよね。

*2:今回は和を3まで取ることにしているので3次行列としましたが、別に好きな次元の行列を考えてよいです。

*3:まあ要するに結晶の軸方向ごとの違いがあるかもしれないということですが、常に直交座標を取るのがいい感じになるとは限らないです。しかしながら面倒がないように直交座標を使います。

*4:ベクトルもある種のテンソルです。

*5:条例レベルで売ることを禁じていることはあるようですが、私が探した限り購入することをそのまま禁じる法律はなさそう。

*6:人口が少ないほうの趣味を探せばキリがないのですが、存在がそれなりに知られているわりにはかなり少ないと思います。